出典◆清家篤先生(慶應義塾大学名誉教授/日本赤十字社社長/全世代型社会保障構築会議議長/当法人顧問)の講演資料より作図


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40代から知識を持って備える
職域でのフレイル予防・ロコモ予防

 加齢とともに次第に心身の働きが弱まっていきます。かつては「老化」という言葉でまとめられていましたが、現在はフレイル(健康と要介護の間の状態)として、主に以下の3つに分けられています。

 (1)身体的フレイル (2)こころのフレイル (3)社会性のフレイル

 フレイル状態を放置してしまうと3つのフレイルが複合的に重なり合って(フレイルドミノ、下図)、将来の要介護に向けて虚弱化が加速してしまう結果を招いてしまいます。 
 これは高齢者に限った話ではなく、暮らし方や栄養の摂り方などによって定年を迎える前の早い時期(40〜50代)からで身体的フレイル状態となっている人もいます。しっかりした筋肉や骨を維持することが、その後の健康寿命に関係します。そのため、栄養面で言えば、たんぱく質やビタミンD、カルシウムをはじめとしたバランスのよい栄養を毎食しっかり摂ることが必要です。
 フレイルは、正しい知識をもって、生活習慣をチェンジすることで、健康な状態へ戻すことができるとされています。「痩せ=健康」という多くの日本人が持っているイメージは、フレイル予防の視点では大きな誤解を生む可能性があります。そうした意味でも、科学的なフレイルチェックが必要です。

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  • 中小企業、小規模事業所を含めた職域に、フレイル予防に関する学習動画を制作しご提供します。経営者の方はもとより、ミドル・シニアワーカーの皆さんへの視聴をお勧めください。
  • ご希望があれば、フレイルチェックや予防体操実施のコーディネートを行い社内や地域における「フレイルサポーター」育成推進のお手伝いを行います。
  • 健康寿命を延ばし、結果、社会参加を続けられる寿命(就労寿命)を延ばすためにシニア期以降の正しい栄養の摂り方を学んでいただく機会をご提供します。
  • 健康状態と同じように大切なのは生活環境です。退職をきっかけに、突然地域社会との関係性が空白にならないことが重要だと言われています。そのための準備は、できるだけ早めにスタートを。


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フレイル予防とも直結した
お口の健康維持

 フレイル予防のためには、何でも食べられる健全な口の機能が不可欠です。
 しかし、残念なことに、わが国のシニア期の皆さんの口腔の健康状態は、理想的だとはいえません。そればかりか、逆に70代以降に必要であるはずの歯科の受診患者数は年齢とともに減少しており、必要な治療や口腔健康管理がなおざりになっています。
 口は「健康の玄関口」であり、一方で、健康状態の悪化を招いてしまう「病気の入口」でもある重要な器官です。肺炎や糖尿病、感染性心内膜炎、虚血性心疾患をはじめさまざまな全身の病気との関係も深いことがわかってきています。
 なお、機能としての口の衰えであるオーラルフレイル、そして栄養状態の悪化は、認知症に影響を及ぼすことが学術的に解明されています。
 人生100年時代といわれているなかで、健全で清潔な口と機能を維持することは、健康寿命の延伸や介護予防にも直結している「努力が報われる」重要な条件なのです。
 その意味で、職域における「歯科健診」の励行はとても大切です。

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  • 「オーラルフレイル予防」「口腔機能低下症」をはじめ、シニア期以降に必要なお口の課題や「歯周病」「義歯の効能」「歯科健診の効用」など、シニアのお口の健康を理解するうえで不可欠な内容の学習動画を制作して職域にご提供します。
     なお、口腔に特化してもっと詳しく学びたい方のためには、当法人の姉妹活動でもある 「口腔健康サポーター市民講座」を無料でご視聴いただけます(下記QRコード)。
  • ご希望があれば、地域の歯科医師会、歯科衛生士会と連携をさせていただき、地域や社内における歯科口腔保健活動普及のお手伝いをいたします。
  • 「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」が2024年に発出されています。その中で、オーラルフレイルの可能性を簡単に自己評価できる5つの質問票「OF-5(Oral frailty 5-item checklist)」も公表されていますので、ご活用ください。


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認知症予防も
社会参加の継続から

 日本では、すでに65歳以上の4人に1人以上が、認知症またはMCI(軽度認知障害)といわれる予備軍と推計されています。
 64歳以下の認知症を若年性認知症と呼びますが、認知症に向けて脳が変化を始めるのは、発症の20〜30年も前からだとも言われています。
 人や社会とのつながり(社会参加)が認知症予防に関連があるという研究は数多く報告されてきました。逆に、糖尿病などの生活習慣病があること、運動習慣がないこと、常習的な喫煙、過度の飲酒、栄養バランスの悪い偏った食生活などが認知症発症リスクを高めることがわかっています。MCIの中でも、そのようなリスク因子の多い人ほど、認知症へ移行する人が多いのです。
 生活障害でもある認知症に対する誤った知識や理解は、本人やご家族の今後に悪影響をもたらします。そればかりでなく、所属する社会・職域にとっても大きなマイナスです。
 そのために、高齢期を迎えるかなり前から、認知症のリスク因子を正しく理解して、それを避けて生活することが大切な科学的「予防」となります。また、早期の受診により、認知症やMCIの進行を遅らせることが可能な場合もあります。

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  • 認知症リスクを下げる生活習慣について学習動画を提供します。
  • 認知症のご家族の介護をされる場合、専門家からのアドバイスが得られる学習動画を提供します。
  • 認知症をよく知るために、ご希望があれば、地域または社内での個別セミナーの実施についてサポートいたします。


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シニア期以降に増える
病気の早期発見に向けて

 50代以降は年齢とともに医療への依存度が加速度的に高まります。そのため、ご本人やご家族は身体的・精神的・経済的負担を被りますが、医療費という観点では、その人が勤める企業や保険者、国、自治体は財政的に圧迫されるとともに、高齢者医療費のための現役世代の保険料負担も増していきます。
 いうまでもなく、50代以降はさまざまな病気のリスクが高まるため、「自分自身を健康経営」する意味でも、人間ドックや健康診断や人間ドックが重要になってきます。
 具体的には、自動車運転に携わる方にとって、眼の病気の兆候をチェックすることは重要です。また、建設業にお勤めの方にとって、骨粗しょう症の進行があると、ちょっとした転倒が骨折につながることもあるため、骨密度の測定などが求められます。
 いずれにしても、やみくもに検査を受けるのではなく、身体の変化と正直に向き合いながら、主治医や専門家と相談するとともにさまざまな検査項目について知っておくことも大切です。

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  • 糖尿病、がん、喫煙と肺がん、肺炎、脳卒中、高血圧症、眼の病気、膝や腰など運動器官の問題、腎臓や泌尿器科系疾患、ミドル・シニア期におけるうつ、更年期障害(男女共)、ホルモンバランス異常、シニアの疲労と睡眠、住まいの環境と健康(生活環境病)など、学習動画(今なら間に合う!シリーズ、1テーマ10分)として制作・提供します。経営者の方はもとより、従業員の皆さまとそのご家族にぜひ視聴をお勧めください。
  • シニア期以降は、複合的な病気をもつケースがあり、その相談と継続的な治療環境維持のために、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局を持つことを強くお勧めします。ご希望により、当法人の「活動サポーター」の協力で、地域の医師会、歯科医師会などへの橋渡しをお手伝いさせていただきます。